掲載2010年11月21日

訳者メモ

アフリカの間違いではなくアメリカの飢餓である。アメリカでは6人に1人が困窮状態にあるという貧富の格差の深刻さを伝える記事だが、これはいろんな読み方ができる。

まず、それだけの割合の人が政府の生活補助を受けているということは、米国単体としては経済が成り立っていないことを意味している。それが無理矢理に成り立っているように見えるのは、いかに米国が諸外国から搾取しているかの証拠になる。その源泉は、米国の軍事力はすごいと世界中が信じていること、人々の「信仰」にある。戦争やテロの恐怖もそのために必要であり、そのために米国は、世界全体の43%の軍事費を使って(09年の世界の軍事費、トップは米国 中国が2位に)、世界中に騒乱の種をまいている。これが金本位制ならぬ「軍事力本位制」のドルである。勝手に企業に会誌を送りつけてきては高額な会費請求をしたり、ショバ代を請求する暴力団と同じシステムである。

次に、食糧市場の観点から見ると、記事にあるフードスタンプの利用が、一大市場に成長している。最近はEBTカードという電子マネーになっており、月初めの午前零時にチャージされるため、月末日の深夜にウォルマートに人々が群がっているという。コストコも昨年からフードスタンプの取り扱いを積極的に進めている。ドラー・ゼネラルの売上の4%はフードスタンプが占め、毎年10%増加中とのこと。(Midnight in the food-stamp economy

これだけ一大市場になっているということは、アグリビジネス利権が絡んでいるのではないかと思い、使途制限があるか調べてみたが、米国農務省のホームページで見る限り、その場で食べるようなホット・フードは不可(つまり外食には使えないのだろう)だが、生野菜も購入可能であり、一部の州では生野菜を買う人には補助を割り増しして奨励しているケースもある。したがって、どちらかというと、記事にもあるように、世界の43%の軍事支出をしている米国の議会ではこの食糧補助を削減する方向で動いており、例えば遺伝子組み換え食品の普及に利用するといった意図は、今のところ、ないように思える。

著者は、金融寡頭勢力の自己中心的な利益追求に原因があると指摘しており、その通りだろうが、そうした個人レベルの金儲けに夢中になっている層よりも更に上層の陰謀としては、わざとそうしているわけであり、最後の結びにあるような革命・内乱を起こしてほしいのである。これだけ貧困が一般的になっていれば、票の数的には貧困層はかなり大きな政治勢力である。フードスタンプを削減するだけでいつでも暴動のスイッチを押せる態勢にあるし、さらに食糧供給の不足を同時発生させれば、すさまじい勢いの混乱を起こすことができるだろう。もともとアメリカ人は情報操作されやすい国民性であり、アメリカは「流行の国」であるが、これほど困窮者が多ければ、ますます情報操作しやすい状態にあるといえる。シミュレーション・ゲームを遊んでいる人にとっては、とても面白いに違いない。

単純に米国が無法地帯と化し、世界の軍事費の43%を占める軍事力を支えることができなくなると、残りの世界は平和になってしまう。それでは困るので、米国崩壊前にイスラエルが率先して世界中を戦争状態にしておき、ついでに「宇宙人」にも登場してもらい、世界政府と世界軍を作っておくというシナリオだろうか。

先般のヘルスレンジャーの記事にあった上院の510法案については、票決がサンクスギビング・デー(11月の第四木曜日)の後まで延期され、11月29日に実施される可能性があるということである。小規模農業を適用除外にする修正案(Tester-Hagan Amendment)が審議されている。この修正が通れば、かなり改善になるとはいえ、FDAの権限が強化されることに変わりはなく、Natural Newsでは、残りの一週間で反対キャンペーンを展開する模様。

Senate Bill 510 vote delayed until after Thanksgiving - Take action now to oppose food tyranny

アメリカの飢餓

Hunger in America

パトリック・マーティン

By Patrick Martin

2010年11月17日

米国農務省(USDA)の最新の報告によると、昨年の段階で、米国の世帯数の約15%、1740万世帯・約5千万人が、まともに食糧を買うことができないほど貧しい状態だった。この内の3分の1以上の世帯(百万人の子供を含む)は、日常的に食事を欠いていることが判明した。

フードスタンプ(食糧配給券)を所管している農務省によると、「食糧不安状態」に分類される世帯数は、二桁近い失業率をもたらした現在の不況に入る前の2006年と比べ、3倍以上になっている。多くの人は、食卓に食べ物を並べることができないことを認めるのを嫌がるため(特に子供がいる場合)、「食糧不安状態」の数字は、食事を抜いているかどうか、フードスタンプを切らしているかという質問の調査結果に、所得と食糧価格の比較結果を加味して、計算されている。

世界最大の農業・食糧生産国であるアメリカで食糧不安が発生する理由は、「カネがない」の一つに尽きると言ってよい。 過去三年で、貧困率は急激に上昇しており、推定5千万人が政府の規定する貧困ライン(これは、必需品の入手に必要な所得を大幅に低く見積もっている)を下回る生活をしている。

米国の世帯の食糧入手能力に大きな不平等があることを示すものとして、典型的な「食糧確保状態」の世帯は、同一の家族構成の典型的な「食糧不安状態」の世帯に比べ、食費が33%も多いと農務省の報告に記載されている。

社会危機の深刻さを最小化するはずのオバマ政権の政策に調子を合わせるため、この報告を発表した農務省のケビン・コンカノン次官は、最新の飢餓調査では、前年に比べ、問題の「安定化」が見られると語った。つまり、2008年と同じぐらいの人が2009年も飢餓状態だったということであり、そのことを「改善」であるかのように言っているのである。だが、これはアメリカが過去40年間に経験したことのないレベルの窮乏状態の定着である。

米国の失業率は、2008年の900万人から2009年の1400万人に急上昇しているが〔訳註:この政府の失業統計はまったく信用できず、実態は遥かに多い〕、コンカノンは、飢餓状態の人数が増えていないから希望が持てる報告だと認識し、フードスタンプなど飢餓の増加をくいとめる連邦政府の施策が奏功していると述べている。「この報告は、連邦の栄養支援プログラムがアメリカの世帯にとってどれほど重要であるか強調するものだ」と述べた。

SNAP(Supplemental Nutrition Assistance Program : 追加的栄養支援プログラム)のフードスタンプを受給しているアメリカ人の数は、4240万人に増えた。これとは別に百万人の子供が、無料もしくは助成金付きで毎日の学校給食(昼食)を受けており、約40万人の妊婦・授乳期間中の母親が牛乳、バター、卵などの食糧を、WIC(婦人児童向け栄養強化計画)により受給している。こうしたことをすべて考慮すると、米国世帯の4分の1が、フードスタンプなど何らかの食糧援助を受けている人を少なくとも一人は抱えていることになる。しかし、「食糧不安状態」の世帯の43%は、これら三つのプログラムのいずれも利用していない。

オバマ政権の役人の自己満足的な発言もさることながら、既に社会の需要に応えていない現状の不十分な栄養プログラムが、さらに議会によって削減されることが確実であると信じるに足る根拠がいくらでもある。児童栄養法(Child Nutrition Act)は今年再承認される必要があるが、上院版の法案では、学校給食のコストの増加を賄うため、フードスタンプから20億ドル以上をカットすることになっている。学校で子供たちに食べ物を与えるために、家庭では子供たちから奪い取っていることになる。今年初めにも、長期失業者向けの失業給付の延長の原資の一部が、フードスタンプ・プログラムの削減で賄われている。

人間の生活と子供たちの未来を大切にする社会ならば、5千万人(1700万人の子供を含む)が飢餓に瀕しているという壮絶な光景は、緊急事態と認識されるべきだろう。かつて米国は、地球全体に食糧を供給する能力を自慢していたことを考えると、この米国内の飢餓の深刻化に無関心でいられることは、国民的な恥である。

だが、2010年のアメリカでは、この飢餓のニュースは、新聞各紙の一面で扱われることもなく、小さな記事に追いやられ(ワシントンポストではA21ページ。ニューヨークタイムズには掲載されていない)、夕方のテレビ・ニュースで取り上げられることもなく、イギリスのウィリアム王子の婚約の話で盛り上がっていた。

この飢餓の報告は、米国の金融寡頭勢力の社会に対する無責任さ、貪欲さ、あからさまな残酷さを測る新たな尺度になる。彼らは、世界で最も豊かな国で苦しむ大量の人々を救うことよりも、自分たちの信じられないような銀行預金残高と資産を太らせることばかり考えている。

米国議会は選挙後の「レームダック」状態で月曜から始まっており、木曜日にはオバマ大統領、民主党と共和党の党首による二大政党サミットが開催される。食糧危機がこれらの場で議題になることはないだろう。話し合われるのは、更なる富を求めて飽くことを知らない富裕層の渇望という意味の「飢餓」を満たすことぐらいだ。

オバマ政権と共和党は、現在、富裕層のためにブッシュが行った減税の延長を求める右派の要求に、民主党が屈服するための条件を交渉している。この減税の延長は、今後10年間で7千億ドル(一年当たり700億ドル)に相当し、連邦の栄養プログラムのコストをすべて合計した金額よりも多い。

一方、オバマは、富裕層と企業に対する減税と労働者層に対する増税とともに、年寄りや貧困者に対する社会保障プログラムの急激な削減を強行する赤字削減委員会の委員長の提案を称賛した。ホワイトハウス、既成政治勢力、マスコミが繰り返している呪文は、アメリカ人は身分不相応な生活をしており、消費の削減を受け入れなければならないということだ。

米国を支配するエリート、そして両政党(民主党と共和党)も、飢餓と貧困に関心がない。これら「自由市場」信仰に最も毒された人々は、飢餓や貧困のような社会悪をポジティブな「良いこと」と認識する傾向にある。飢えた労働者は、賃金や労働条件に関係なく、どんな仕事でも引き受けたがるからである。何を望んでいるのかよく考えるべきだ。

アメリカの支配階級は、彼らの召使いたち(政治勢力、労働組合、マスコミ)も阻止できない下層階級からの爆発を引き起こす状態を作り出している。いま最も差し迫って労働者がしておかないといけないことは、来るべき政治運動を革命的なものにする準備をすることだ。これは社会平等党〔訳註:トロツキー主義〕を盛り上げることを意味する。

(翻訳:為清勝彦 Japanese translation by Katsuhiko Tamekiyo)

関連情報

原文 Hunger in America (Global Search)

Supplemental Nutrition Assistance Program (SNAP) 米国農務省

SNAPの利用方法の情報 Getting SNAP.org http://www.gettingsnap.org/