掲載2010年3月7日
訳者能書き「サイトリニューアル記念記事」
サイトデザインを一新して、読者の気が散りやすいようにしてみた。仕上がってみると、トップページに孔雀の写真を使ってみたかっただけのような気もしてきた。孔雀には不自然な美しさがある。太古の昔、美しさが武器だった時代の名残りなのだろうか。それから武力の時代となり、今の知能が武器の時代になったのかもしれない。トップページ以外については、右上の絵を拝借できたので、救われた感がある。
さて、今回の記事は、去年7月のもので少し古いが、最近特に米国と中国の関係が緊迫しているような演出がされているので、実際のところはどうなのか参考になると思って選んでみた。日本のマスコミの論調は、「ノーベル平和賞」のオバマに対し、中国は人権抑圧・軍事大国化という印象を与え続けているので、やはり逆張りの当サイトとしては、このような情報を発信することが必要だろう。
最近、私も急速に精神的成長を遂げつつあり、今後は人を批判することはやめて、「皮肉」と「嫌味」に徹することにした。そういう意味では、ウィリアム・イングドール氏ほど洗練された嫌味の効いた文章を書ける人も多くないだろう。今回の記事も、随所にふんだんに「皮肉」と「嫌味」が散りばめてあり、読者を惹き付けて離さない。実は、今回、翻訳を大半終えたと思った頃に、他のサイトに翻訳したものを発見してショックを受けたが、私はひるまない。ウィリアムの皮肉の風合いを伝えることは普通のマトモな翻訳者にはできないはずだ。とはいえ、英語原文のハイブローな嫌味の効き方と比べると、まだまだである。十分にお伝えできない力不足を感じる。本格的な嫌味の醍醐味を味わいたい方は、是非原文にチャレンジしていただきたい。
少し真面目に内容紹介すると、この記事のポイントは、新疆の地理的な意味(ロシアと中国を結ぶパイプラインの経路)から米国は新疆の不安定化を望んでいるという話がメインである。それから、米国のNEDという「政府内非政府組織」(実に嫌味が効いている)の意味である。また、UNPOという「不明瞭な加盟条件で代表なき民族を代表する」奇妙な組織についても言及されている。

ワシントンの狙いは中国の「深い所」にある
Washington is Playing a Deeper Game with China


NEDは、政府内の「非政府組織」
中国の新疆ウイグル自治区で7月5日に発生した悲劇的な事件を理解するには、アメリカ政府の「独立したNGO」とされるNED(the National Endowment for Democracy、米国民主主義基金)の本当の役割を詳しく追ってみると良いだろう。あらゆる状況から判断して、またしてもアメリカ政府が、「民間」の「NGO(非政府組織)」ということになっているNEDを介して、中国の内政に大々的に介入しているようだ。
ウイグルの人々に対して北京当局が人権侵害していることが問題だとされているが、ワシントンが新疆に干渉する理由は、それとは無関係なようだ。どちらかといえば、今後中国が、上海協力機構を構成するロシア、カザクスタンなど中央アジア国家とエネルギー面で経済協力することの戦略的重要性から、ユーラシア大陸における新疆の位置が地政学的に重要なことと大いに関係しているようだ。
世界各国にある中国大使館の前で抗議活動している組織の内、主な組織は、ワシントンD.C.に拠点のある「世界ウイグル会議」(WUC)である。
WUCには、スタッフを雇い、しゃれた英語版ウェブサイトを作る資金があり〔訳註:日本語版もあるようだが、接続に妙に時間がかかるので見るのをやめた〕、米国議会が資金を出しているNEDと緊密な関係にある。NED自身が出している報告によると、WUCは、「人権の調査・擁護プロジェクト」を行うために、毎年NEDから21万5千ドルを受領している。
WUCの議長をしているリビア・カディア(Rebiya Kadeer)は、「洗濯女から大富豪になった」と自身の経歴を語る亡命ウイグル人である。彼女は、ワシントンD.C.に拠点のあるアメリカウイグル協会の会長でもある。この協会も、NEDを経由して米国政府から多額の資金を受け取っている人権団体である。
NEDは、2008年3月の「深紅の革命」(Crimson revolution)の背後にいた様々な組織にも資金援助して深く関与していた。ビルマとミャンマーのサフラン革命もそうだし、実質的に全ての東欧諸国の政情不安定化と政権転覆にも関与してきた。近年のセルビア、グルジア、ウクライナ、キルギスタン、それから最近の選挙直後のテヘランもそうだ。
NED設立の法案作りに関わったアレン・ワインスタインは、1991年のインタビューで極めて率直に話している。このインタビューは公表されている。「我々が現在やっていることの大半は、25年前ならCIAが秘密活動でやっていたことだ」
NEDは、私的な、非政府の、非営利の基金ということになっているが、その国際的活動に対しては、米国議会から毎年予算が割当られている。NEDの資金は、4つの「中核的基金」を経由する。(1)オバマの民主党とつながったNDI( the National Democratic Institute for International Affairs:米国民主党国際研究所)、(2)共和党とつながったIRI(the International Republican Institute:共和党国際研究所)、(3)AFL-CIO(アメリカ労働総同盟産業別組合会議)および国務省とつながった ACILS(The American Center for International Labor Solidarity:国際労働連帯米国センター)、(4)米国商工会議所とつながったCIPE(the Center for International Private Enterprise:国際民間企業センター)である。
是非とも確認しておかないといけないのは、新疆ウイグル自治区の暴動をそそのかすためにどんな活動をNEDが行ってきたのかということであり、そして、そのようなNEDの資金支援によって、ワシントンの宿命の標的である国の主権に介入することを、支持するのか非難するのか、オバマ政権の政策は何なのかということである。その答は間もなく得られるに違いないが、新オバマ政権の米国政策を明確に理解するには、NED、国務省、米国政府にヒモ付いたNGOが(ウイグルの分離独立運動・暴動をそそのかしたのが事実ならば)、その関与の事実について全面的に情報開示するよう求めるくことが有効だろう。ウイグルの暴動が、上海協力機構の歴史的な会議の直後に発生したことは、単なる偶然の一致であろうか?
UNPOという奇妙な名前の組織に地政学的に厳選された少数民族が結集
2009年5月18日、アメリカ「政府内の私的NGO」であるNEDは、WUCの公式ウェブサイトによれば、「東トルキスタン:共産中国の60年の支配」と題した大掛かりな人権会議を主催している。「代表なき国家民族機構(UNPO)」という名前の奇妙なNGOも共同主催している。
UNPOの名誉会長であり創設者であるエルキン・アルプテキン (Erkin Alptekin)は亡命ウイグル人で、米国情報庁(USIA)の公式プロパガンダ組織である『ラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティー』(RFE/RL)のウイグル部長として、また、ナショナリティ・サービスセンター(移民や難民の支援事業)の次長として働いていたときに、UNPOを設立している。
それと同時に(USIAと活動していた頃)、1991年にWUCも設立した。アルプテキンが1991年にWUCを設立した頃のUSIAの公式任務は、(米国の)「国益を促進するため、外国の民衆のことを理解し、教育宣伝し、感化させること」だった。WUCの公式ウェブサイトによると、「アルプテキンはWUCの初代議長」であり、「ダライラマの親友」である。
UNPOのことを詳細に調べていくと、この組織は、実はアメリカの地政学の戦略家にとって、夢の組織だったことが判明する。先述の通り、UNPOは1991年に組織されたが、それは、ソ連が崩壊しかけていたタイミングであり、ユーラシア大陸の大半の部分が政治的・経済的な混乱状態にあった頃である。UNPOの総裁は、2002年より、オーストリア皇子のカール・フォン・ハプルブルグであり、彼は(現在ではオーストリアでもハンガリーでも認知されていないが)「オーストリアの王位継承者・ハンガリー王子」という称号を掲げている。
UMPOの主義・信条として「自決権」というものがあり、57の多様な民族集団が、非公開の不明瞭な手続きでUMPOへの正式加盟を承認され、それぞれ独自の旗(国籍)を持っている。合計で1億5千万人の人口を抱え、オランダのハーグに本部がある。
UNPOのメンバーには、1991年にユーゴスラビアから完全に分離したときに「加入」したコソボも含まれる。「オーストラリアのアボリジニ」も、コソボと同時に設立時に加入したことになっている。カナダ北部のバッファロー渓谷のインディアン民族も含まれている。
この厳選されたUNPOのメンバーにはチベットもあり、やはり創立メンバーである。また、クリミアのタタール人、ルーマニアの少数派ギリシア人、チェチェン・イチケリア共和国(ロシア)、ビルマの民主主義運動、コンゴ民主共和国とアンゴラとに隣接した海湾の飛び地などの、地政学的に爆発性のある地域を含んでいる。偶然の一致であるが、アンゴラの沖合いには、コンドリーザ・ライスの古巣(シェブロン石油)がリース権を持つ世界最大級の海底油田がある。厳しいUNPO加入条件をクリアした地政学上の重要地点には、イラン系クルディスタンとやらを名乗る地域の他に、南アゼルバイジャンと自称しているイラン北部の広大な土地もある。
UNPOのウェブサイトによれば、2008年4月、米国議会のNEDは、UNPOと共同で、WUCの「リーダー養成」セミナーのスポンサーになっている。著名な学者、政府代表、市民団体など、世界中から50人以上のウイグル人が、ドイツのベルリンに集まり、「国際法の下に自決」を目指して論議した。内緒で何を話したのか、分からない。基調演説をしたのは、リビア・カディアである。
新疆の暴動の怪しいタイミング
中国北西部の新疆の首都ウルムチで発生している目下の暴動は、現地時間で7月5日に始まった。
WUCのウェブサイトによると、暴動の「きっかけ」は、6月26日に中国広東省の玩具工場で漢民族の労働者が、ウイグル人の労働者二名に暴行し、死ぬまで殴ったことにあるとされている。さらにその暴行の理由は、その暴行を受けたウィグル人が、二人の漢民族の女性労働者に対し、強姦か猥褻行為をしたことにあると言われている。7月1日、WUCのミュンヘン支部は、この広東の暴行事件とされるものについて、世界中の中国大使館・領事館に対して抗議行動をするよう呼びかけた。WUC自身も、この暴行事件の詳細については、一方的な主張と疑わしい証言に満ちている事実を認めていたにもかかわらずだ。
WUCの報道発表によると、この6月26日の暴行容疑こそが、世界的な行動要請を発令した根拠になっている。
7月5日(新疆では日曜日だが、ワシントンはまだ独立記念日の7月4日だった)、ワシントンのWUCは、漢民族の中国人の武装兵士が街路で手当たり次第にウイグル人を拘束しており、中国の公式報道はウルムチの暴動の拡大と車両の炎上により三日間で140人以上の死者が出たと言っていると主張した。
中国の公式報道機関・新華社通信は、ウイグル人のイスラム教少数派のグループが、異民族の漢人の歩行者を襲い始め、車両を燃やし、棒や石でバスを攻撃したと報道している。「ナイフや木の棒、レンガ、石を持って、通りを占拠した」と、目撃者の発言を引用している。フランスのAFP通信社は、ワシントンのアメリカウイグル協会の総書記アリム・セイトフ(Alim Seytoff)の発言を引用している。彼の話によれば、抗議行動中の群衆に対して警察が「無差別」に発砲を始めたという。
同じ事件に対し、報道が食い違っている。中国政府の説明と暴動の写真を見ると、漢人の住民を攻撃したのはウイグル人のようであり、それが死者と破壊を招いている。フランスの公式報道では、中国の警察の「無差別発砲」に罪を負わせている。〔訳註:AFPは独立経営を進めているがフランスの国営通信社〕
ここでポイントなのは、フランスのAFP報道は、情報源をカディアのアメリカウイグル協会に頼っているところだ。ニュースを読む人は、AFPの報道が、米国の地政学的な計略(中国経済の将来に対するオバマ政権の奥深い策略)に動かされているかどうか吟味する必要があるだろう。
上海協力機構がロシアのエカテリンブルクで会議をして何日もしない内に、ウイグル人の組織による新疆の暴動が発生したのは、偶然に過ぎないのだろうか? この会議には、公式オブザーバーとしてイランのアフマディーネジャード大統領も参加していたのである。
ここ数年というもの、ますます敵意むき出しの想定不可能なものになっている米国の外交政策に対し、ユーラシアの主要国(中国、ロシア、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギスタン、タジキスタン)は、軍事分野だけでなく経済面でもより実効ある率直な協力体制を模索してきた。それに加え、イラン、パキスタン、インド、モンゴルに、上海協力機構のオブザーバーの地位が与えられている。上海協力機構の国防相たちは、相互の国防のニーズについて、定期的に協議を行い、意思疎通を深めている。挑発的なNATOと米軍は、隙があればどこであろうと拡張し続けるからである。
ユーラシアのエネルギー配置・輸送からみた新疆の重要性
上海協力機構の諸国が、中国の新疆地域を平和で安定させておきたい理由は他にもある。それはやはり国の安全の根幹にかかわる要素である。中国の最重要な石油・ガスのパイプライン・ルートの何本かは、まさに新疆自治区を通り抜けているのだ。カザクスタンと中国のエネルギー面での結び付きは、両国の戦略にとってとてつもなく重要である。その結び付きがあるおかげで中国は、米国との関係が悪化すれば切断されかねない石油供給源への依存度を軽くできるのだ。
カザクスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ大統領は、2009年4月、北京を公式訪問した。その会談では、経済協力の強化が話し合われた。特に巨大な石油埋蔵資源(同様に天然ガスも豊富な可能性が高い)があるカザクスタンとのエネルギー分野での関係強化を中心に話し合われた。その北京の会談の後、中国のメディアは、「中国の大きなパイプを満たすカザクスタンの石油」といった見出しでニュースを伝えた。
2009年に完成予定のアタス~阿拉山口(アラシャンコウ)パイプラインは、新疆経由で中国に天然ガスを送ることになる。また、中国のエネルギー会社は、カザクスタンで、モイナクスカヤ(Moynakskaya)の水力発電設備、ザナゾルスキー(Zhanazholskiy)のガス加工工場、パブロダール(Pavlodar)の電気分解工場の建設に関わっている。

米国政府エネルギー情報局によると、中東を除けば世界最大、世界五位の埋蔵量を持つカザクスタンのカシャガン(Kashagan)油田は、アティラウ(Atyrau)市に近いカスピ海北岸の沖に位置している。中国は、カザクスタン北西部のアタス(Atasu)から、中国の新疆地域の国境にあるアラシャンコウ(Alashankou)まで、長さ613マイルのパイプラインを建設し終え、カスピ海の石油を中国に輸送中である。中国側で単独で原油を買い付けているのは、中国石油天然気(PetroChina)の子会社チャイナオイル(ChinaOil)である。このパイプラインは、CNPC(中国石油天然気集団公司)とカザクスタンのKaztransoilの合弁事業である。2007年には、およそ日量85,000バレルのカザクスタンの原油が、パイプラインを流れた。中国のCNPCは、カザクスタンで他にも大きなエネルギー事業に関わっている。その全てが新疆地域を横切るのだ。
2007年、CNPCは、トルクメニスタンからウズベキスタンとカザクスタンを経由して中国まで天然ガスを送るパイプラインの建設に20億ドル以上を投資する合意に署名した。その1,100マイルのパイプラインは、トルクメニスタンとウズベキスタンの国境にあるゲダイム(Gedaim)を起点に、ウズベキスタンとカザフスタンを経由し、最終的にやはり中国の新疆地域のコルガス(Khorgos)に至る。トルクメニスタンと中国は、そのパイプラインを通るガスについて、30年物の供給協定を締結している。CNPCは、トルクメニスタン側の上流プロジェクトと、新疆地域から中国南東部へと中国内を通る第二パイプラインの開発を総括させるため、二つの事業体を設立した。およそ70億ドル規模のプロジェクトである。

同様に、ロシアと中国は、シベリア東部から新疆を通過して中国に至る、大規模な天然ガス・パイプラインについて協議中である。シベリア東部には、確認済と見通しを合わせ、およそ135兆立方フィートの天然ガスが埋蔵されている。提案中のパイプラインを使えば、中国は今後十年間、コビクタ(Kovykta)ガス田から天然ガスの供給を受けることが可能だ。
現在の世界的な経済危機の中で、カザクスタンは100億ドルもの巨額の融資を中国から受けている。その半分は、石油・ガス事業のためである。アタス~アラシャンコウの石油パイプライン、中国~中央アジアのガス・パイプラインは、中央アジア諸国を、中国の経済にまさに「接続」する道具だ。このユーラシア大陸におけるロシアから中国まで中央アジア全域の結合は、ワシントンが最も嫌がる地政学的結合に他ならない。間違っても公言しないだろうが、ワシントンにとって、上海協力機構が強化している結束を弱体化させる手段としては、新疆の不安定化ほど理想的な手段はない。
(翻訳:為清勝彦 Japanese translation by Katsuhiko Tamekiyo)

原文の紹介
Washington is Playing a Deeper Game with China
F.William Engdahl ホームページ http://www.engdahl.oilgeopolitics.net/









